2014年7月10日木曜日

ドールメイクは武士のたしなみ その2

ドール(DD)のメイクに挑戦、な記事です。

前回からの続きになります。前回は主に道具の紹介、今回から具体的なメイクを順を追って説明していきます。前回の、続きのお話。

前回記事はこちらから↓

ドールメイクは武士のたしなみ その1




いよいよメイクです。改めて、DDH-05ヘッドをご紹介。


Fig.1 DDH-05。頬と唇がほんのり赤いのは一度実験体になったせい



実際の作業に入る前に、言葉を整理しておきます。

この先、絵の具の濃い・薄いという言葉が頻繁に出てきます。ですがこの「濃い・薄い」というだけでは、「色が濃い(薄い)」のか「絵の具の濃度が濃い(薄い)」のか分かりにくいので、煩雑で読みづらいかもしれませんが、できるだけ分かるように逐一書こうと思います。

また、「右・左」という言葉が出てきますが、これは基本的にドール準拠で使っています。ですので、単に「右」といったら「ドールの右目側」を指していると思ってください(つまり、このブログをお読みの方からすると、ヘッド正面に向かって左側となります)。これも、混乱しないよう出来るだけ分かりやすく書いていきたいと思います。


さて、まずはバーントシェンナをうすめ液で適当に薄めます。絵具1に対してうすめ液2~3程度でしょうか(Fig.2)。適当です。濃度が濃すぎるよりは薄すぎる方が扱いやすいかと。


Fig.2 絵具とうすめ液の分量。この量で、最後まで描ききることが出来ました。



私は色鉛筆等は使わず、うすめたバーントシェンナでいきなり描き始めました。私は筆なんて慶弔事以外ではめったに使わないので、まずは使い慣れた筆記具で描き始めるべきか、とも思いましたが、どうせリムーバーで消せるので多少歪んでも平気だろうと結論しました。

描き始める前に、下敷きにしている紙や、ヘッドのふたや、何でもいいですが、ちょっと筆で試し描きをしてみてください。絵具の乗り方と、線の太さを事前にチェックしておきます。あまり絵具が筆にしみ過ぎているとベチャッと滲んだ線になってしまうので。

で、左右対称になるよう描く。まずは眉から、というのをどこかで見た気がする(あいまいです)ので、眉から描きます。後でいくらでも直せますから気楽にいきましょう。


Fig.3 眉下描き



早速左右対称になっていませんが、後々直します。


眉毛の位置ですが、アニメ絵ですと結構眉は目と離れていますよね。しかし以前、アニメ絵の比率そのままでドールにメイクをしたところ、なんだか間抜けになってしまいました(私が下手だからというのもあると思います)。なので私は、アニメ絵よりも気持ち、眉毛は下寄りに描くようにしています。

また、これは方々で言われていることですが、まずは描きにくい方の目を先にメイクし、描きやすい方のメイクをそれに合わせる、というのがメイクのセオリーです。右利きの人間であれば、まずはドールの右目側をメイクすることになると思います。

上手な方のHPや、売り物のドールのメイクを見ているとまっすぐで細い線がシュッと引いてあって「やべーよこの人……人間じゃねーよ、マシーンだよ……(失礼)」という感想は誰でも抱きますよね。プロの方がどうやって線を引いているのか凡人の我々には知る由もありませんが、少なくとも私にはまっすぐの線を一度で引くというスキルはこれっぽっちもありません。なので、うすめた絵具で短い線をちょんちょんと引いて徐々に線を伸ばしていきます。

描き始めはムラが気になりますが、今はまだ下描きですから気にしません。本メイクの場合でも、上から何度も重ねていけばムラは消えます(後述)。縁のガタツキも、リムーバーをつけた綿棒でなぞれば綺麗になります(これも後述)。

とりあえず、眉を左右対称に直しました。


Fig.4 眉毛修正。ドールから見て右眉はいじらず、左を直しました。



とりあえず、バーントシェンナでおおよそのメイクを下描きしましょう。


Fig.5 右目の下



Fig.6 横方向から。目じりのあたりにムラがありますが気にしなくて大丈夫です。



Fig.7 アイホールの奥まったところも塗ります。



Fig.8 別角度から



分かりにくいかもしれませんが、アイホールの奥まったところは、目尻まではきっちり塗り、そこから先は先細りになるよう描いています。何故かと言われても困るんですが……(手元のDDアオイ2ndはそうなってるので)


Fig.9 左目も描きました。


Fig.10 左右のバランスを見て、形を調整



Fig.9とFig.10で何が違うかというと、右目の目尻の形を微妙に整えています。左右の目のメイクを比べてみて、左目の目尻の形の方が目指すイメージに近かったので、右目をそれに合わせました。

メイクの形としてはFig.10でほぼ完成としました。Fig.11ではもう少し重ね塗りすることで色を濃くし、下描きのラインをはっきりさせています。まつ毛やまぶたの二重の線などが見にくかったのが、多少改善しました(特に右まぶたの二重の線は分かりやすい変化かと思います)。


Fig.11 全体をなぞり、色を濃くする



で、次に本メイクです。今回はバーントアンバーとバーントシェンナを混色し、うすめ液で薄めました。絵の具の分量は約1:1です。下描きした上から本メイクを重ねるわけですから、当然、本メイクは下描きよりも濃い色になります。逆に言えば、本メイクの色を元に、下描きの絵の具の色を選ばなければならないということでしょうか(アクリル絵の具は厚塗りすれば透けないので一概にそうとも言えないのかもしれませんが、塗装全般のセオリーとして)。


Fig.12 絵の具分量。この写真では1:2くらいですが、色が薄かったので後でアンバーを追加しました。



Fig.13 まぜるとこうなります。実際のメイクも、この色でやりました。
容器が細長いせいか、どう見ても和式トイレのうn……



さて、下描きをなぞるように塗っていきます。このとき大切なのは、濃度の濃い絵の具で塗るのではなく、薄め液で薄めた絵具で塗り、乾くのを待ってからまた塗る、という作業を繰り返すことです。濃度の薄い絵の具は、液が流れて一か所にたまったりしてムラになりやすいですが、重ね塗りすればちゃんと均一な色になるので大丈夫です。


Fig.14 本メイク一回目



Fig.14は、とりあえず一回だけ下描きをなぞったものです(右目のみ。左目は下描きのまま)。色ムラが酷く不安になりますが、何度も塗り重ねれば大丈夫です(ちなみにこのとき私はメイクの経験3回目でしたが、やっぱりムラができて不安になりました)。

二度塗りした結果がFig.15です。


Fig.15 本メイク二度塗り後(右目のみ。左は下描きのまま)



大分良くなったと思いませんか? この後、三度塗り、四度塗り……とムラが無くなるまで何度も塗り重ねますから、最初にムラが出来ても気にすることはありません。


Fig.16 本メイク(右目:二度塗り 左目:一度塗り)



片方を完全に仕上げて、次にもう片方を……というのはバランスが悪いと思い、私はあっちをやったりこっちをやったりして、両方の形を整えながら進めています。


Fig.17 何度か重ね塗りした結果



何度も重ね塗りして(回数は忘れましたが、左右それぞれ6,7回くらいでしょうか)Fig.17のようになりました。この段階で、塗りムラはほとんど解消されています。

さて、Fig.17の時点で気になるのが二点。

・右目の目頭側まつ毛(3本あるやつ)の真ん中の線が歪んでいる

・左目の二重の線のガタツキ


こんな風になっても心配ご無用。リムーバーを綿棒にしみこませ、ふちをなぞれば綺麗になります。このとき、いきなり一発でふちをそろえるのは不可能(少なくとも私には)なので、ヘッドの表面をこすりながらちょっとずつ寄せていくイメージで揃えましょう。言葉だけでは分かりづらいと思うので、図を用意しました(Fig.18)。この図も、分かりやすいかといえばちょっと微妙だな……。


Fig.18 ライン修正の概念図。画像下部の茶色い円弧は眉毛(のつもり)です。



こうしてふちをそろえると、リムーバーで溶けだした絵具がヘッドに残って汚くなりますので、それもリムーバーをつけた綿棒やキムワイプなどでふき取ります。


理系のマストアイテムキムワイプですが、ホームセンターでも普通に売ってます。ティッシュでも良いとは思いますが、キムワイプは細かな紙の繊維が出てこないのでお勧めです。流石、実験科学系での信頼と実績を勝ち得ているだけのことはありますね。ちなみに、下敷きにしている茶色い紙はキムワイプの兄貴分的存在、キムタオルです。これもホムセンで売ってます。

最初に書き忘れましたが、机が汚れないよう下に敷く紙は、新聞紙は使わない方が良いでしょう。過去一度、新聞紙を使ったことがありましたが、思いっきりインクがヘッドに色移りしました。


Fig.19 調整後



閑話休題。


どうでしょうか。だいぶ改善されたように思えます。

このように、細いまつ毛も、はみ出し上等でざっくり描いてしまい、後から綿棒で整える、という方法である程度描けるはずです。それでもダメなほど細いまつ毛は、次の方法で。

絵具を今までよりもちょっとだけ濃い目の濃度にします(上記手順どおりに進めているなら、このころになると溶剤が揮発してきて良い感じに濃くなってきている場合もある)。それを筆につけ、紙や、ヘッドのふたや、何でもいいですがチョンと描いてみます。その時の絵具の乗り方を覚えておき、メイクしたい場所を描くのです。このとき注意なのが、筆を持ちかえたりしないことです。今持っている筆の状態(持っている角度、絵具のしみ具合、毛先の揃い方など)で触れたらどういう風に絵具が乗るか、ということを知りたいので、試し描きしたらそのままメイクです。

ちなみに、ちょっとだけ濃い目に、と言っているのは、薄すぎるとにじんでしまい、細い線にならないからです。ですので、濃度の濃い色を新たに作り直す必要はないと思います。上でもカッコ書きしましたが、「パレット上の絵の具が乾いてきて少し濃くなったかな」くらいの濃さで十分です。

ま、失敗したらリムーバーつけた綿棒でなぞればいいんですよ。

いくらでもトライアンドエラーできます。失敗したところで罰を受けるわけでもないですし、ヘッドが二度と使えなくなるわけでもないですし。


……と、ここまで、眉毛の本メイクを後回しにしていたことにお気づきでしょうか。

なぜ後回しにしたかというと、眉毛の色は、目のふちを塗った色よりも若干明るめの色で塗った方がよさそうだからです。同色で塗ると、眉毛の存在感が強く出てしまって不自然になりました(私の経験からの考察です。間違っている可能性もあります)。

というわけで今回眉毛は、目のふちを塗るのに使ったバーントシェンナー・バーントアンバー混色(Fig.13で作ったもの)にさらにバーントシェンナーを加えて明るくしたものを使いました。

ここで、今まで使っていた絵具に直接色を追加すると、後で細部を修正したいというときに元の色が無くなってしまいますので注意です。小分けにして使いましょう。


Fig.20 眉毛本メイク



さあ、出来ましたか?

ある程度描けたら、細部を整えていきましょう。
チェックする項目としては、まず、線のガタツキや滲みです。これはリムーバーをつけた綿棒でなぞるか、筆で描き足すかしてきれいにしましょう。リムーバーでなぞる場合、ある程度絵具が乾いてからでないと、溶けだした端からまた滲んできますので注意してください。「描いたばかりだけど指で触っても絵具が付かなくなった」程度の乾燥では、滲む可能性がありますのでもう少し時間を置いてから修正した方が賢明かと。

また、色ムラにも気をつけたいところです。グラデーションをつけたいというなら話は別ですが、とりあえず私にはそんな技量ありませんので、ムラのある場所は濃度を薄めた絵具で何度もなぞり、ムラを無くしてしまいました。

細部を整える際は、筆に付着したホコリにも注意してください。ずっと使っていると筆の先にホコリや絵の具の固まったカスが付着してきて、筆の毛先が乱れて思い通りのラインが描けなくなってきます。そう神経質になる必要もないでしょうが、筆はときどき小分けにした薄め液でゆすいでやるとよさそうです。


Fig.21 細部修正後



どうでしょう。Fig.21では、まつ毛の先や眉毛などの細いラインのシャープさを整えました。

なお、Fig.21では、以前の記事で紹介した筆のうち、最も細いものも使いました。逆にいえば、Fig.20までの工程は中細の筆一本だけで進めることができたということです。参考までに。


線にガタツキがなく、色ムラもなくなると……何だか良い感じ!


あとは満足いくまで細部を整えてください。

大体出来たら一度アイを入れ、ウィッグをかぶせてみるといいでしょう(メイク途中も、適宜確認した方がイメージがつかみやすくて良いかもしれません。ただ、絵具の乾燥具合やウィッグなどからのホコリには注意してください)。

作業をしていると、Fig.22のように、ホコリが付いてしまったり、絵の具のダマができてしまうことがあります。Fig.22では、下まつ毛の一部に少しですが凸部が見えるのが分かります。この場合、絵の具が十分乾いてから紙やすりで削ります。削る、といっても絵の具は非常に柔らかいので、ガシガシこする必要は全くありません。800番くらいの紙やすりを小さく切り、なでるような感覚で何度か優しく表面を往復させます。削った後は削りくずが再度付着しないよう、ダスターで吹き飛ばすと良いでしょう。


Fig.22 表面凸部



楽しかった(?)メイク作業もそろそろ大詰め、仕上げに近づいてきました。仕上げ一歩手前の段階が、Fig.23です。


Fig.23 アイライン描き終わり直前



ここで、表面に残った余分な絵具を落としておきます。例えば、左目を見てください。アイホール輪郭部分の線と、二重の線に挟まれた肌の部分が若干茶色くくすんでいるのが分かるでしょうか? リムーバーをつけて綿棒でこすることで線を調整してきましたが、その時に溶けだした絵具が綺麗に拭いきれていないのです。

また、左眉の周囲もぼやけていますし、まつ毛ももうちょっとシャープさが欲しい気もします。

ということで、綿棒にリムーバーをつけ、ぐるっと一周メイクを描いたラインの周囲をなぞり、余計な絵具を除去しておきましょう。メイクを整える作業自体はFig.23でほぼ完成していますので、この作業はメイクの形を変えるというよりも、メイクの輪郭をはっきりさせキリッとした印象にすることが主目的です。その結果が、Fig.24です。


Fig.24 アイライン描き最終形



輪郭をなぞったことで、ぼやけていた印象だったメイクが多少キリッとしました。眉はもっと細くても良いかと思ったのですが、それは次回の課題ということにして、今回はこれで筆によるアイライン描きは完成としました。


長くなってしまったので、一旦ここで。
次回はパステルを使っていきます。


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ドールメイクは武士のたしなみ その2(現在地)
ドールメイクは武士のたしなみ その3(次回)


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