だってねぇ、自重で腕が下がってきちゃうのは、どうやったって撮影に支障をきたしますからねぇ……。
というわけで、ドールを分解してまた組み立て直すお話です。
今回保持力を強化するのは、足首、肘関節、股関節です。
特に改善したかった肘関節を例に、保持力強化の手順を追っていきましょう。
まずは外皮をはがします。上腕と前腕は引っ張れば簡単に抜けますが、前腕部分の外皮はそのままでは抜けません。熱湯につけて数分待ち、PVCを柔らかくしてから引っ張ればあっけないほど簡単に抜けます。
で、取り外した後の画像がFig.1。
Fig.1 肘関節-前腕パーツ骨格
Fig.1上部が上腕側、下部が前腕側です。肘部分は二か所の可動部があり、今回保持力を強化したいのは写真下側の可動部(関節が球状になっている方)です。ねじで留めてあるので、一見このねじを締めれば良さそうなのですが、こいつをどれだけ締めても上腕側の可動部がきつくなるだけで、前腕側の保持力はこれっぽっちも向上しません。
なので、一旦分解して摺動部の抵抗を増やしてやる必要があります。パーツの隙間にマイナスドライバーを入れ、傷をつけないよう注意しながらこじあけます(Fig.2)。そこまで強固にはまっているわけではないので、爪でも外れると思いますが、私は偶然にも前日爪を切ったばかりだったので……。
Fig.2 関節部分解
さて、では保持力を強くするための加工です。やり方としては至極簡単で、肘部分の球体関節を外し、内部に細く切ったセロテープを貼るだけです。要は摺動部分を太らせて、抵抗を大きくするわけですね。写真では幅2mmほどのセロテープを張り付けています。好みに応じてセロテープの幅を変えてやれば、保持力もそれに応じて変わります。
なお、Fig.3ではセロテープがはみ出ていますが、これは写真に撮った際に分かりやすくするためです。実際はこの後、はみ出ている部分は切り取っています。
Fig.3 セロテープで抵抗を増やす。
最後に外皮をかぶせれば完成です。被せるときは、温めなくても押し込むだけで簡単に戻ります(お湯で柔らかくした場合は外皮内部が濡れているので、充分に乾燥させてから)。
また、最も難関だった足首関節についてもばらし方をメモしておきます。ただし、作業に集中しすぎたせいで写真を撮り忘れました。もう一度わざわざばらす気にはなれないので、文字のみで。どうせ画像は色々な方のブログに載っていますし。
まずはPVCの外皮をはがし、骨格をむき出しにします。そのために、まずは取り外した足首を丸ごと熱湯につけます。数分たったら取り出し、引っ張ります。Fig.4は全く引っ張り出していない状態の写真ですが、赤丸の部分に球体関節が入っています。これが、外皮から半分顔を出すくらいまで引っ張ります。素手でもそれくらいなら出来るはずです。
Fig.4 足首パーツ(処置前)
ある程度引っ張り出せたら、かかとの部分にマイナスドライバーを無理やり突っ込み、てこの原理でずるりと引き抜きます。PVCが耐えられないんじゃないかというくらいの力技ですが、しっかり熱湯で柔らかくしてやれば大丈夫です。そのためには、作業中、PVCが冷えてきたと思ったらこまめにお湯につけて温め直す必要があります。また、お湯自体も徐々に冷めてきますから、常にアツアツのお湯を使えるようにしておきましょう。出来れば沸かしたてが良いくらいです。
熱湯がドールへ及ぼす影響が気になるところですが、通常プラスチックは150~250℃程度で成形されるので、お湯程度ではびくともしません。むしろ今回は、PVCをぐにゃぐにゃに柔らかくする必要があるのですが、そのためには約80度以上の温度が必要です(これを業界ではガラス転移温度という)。軟化したPVCはあまりに柔らかくて溶けちゃうんじゃないかと心配になるかもしれませんが、PVCの融点は約150度なので、一般のご家庭で沸かしたお湯では絶対に溶けません。なので、熱湯を容赦なくぶっかけましょう。
また、マイナスドライバーでこじると、間違いなく内部の骨格に傷が付きます。どうせPVCの表皮に覆われて見えないところなので気にする必要は無いと思います。ただ、手を滑らせて、むき出しになる球体関節部や、表皮に傷が付いてしまわないよう気をつけましょう。
めでたく骨格を取り出せたら、ドライバーで球体関節を固定しているねじを外します。このねじの締め具合は保持力には関係していないようです。なので肘と同様、一旦分解して摺動部の抵抗を増やしてやる必要があります。分解した後は、肘部分と同様、摺動部にセロテープを貼って完了です。
好みの保持力に調整できたら、ねじを締めて、水分をきっちり取ってからPVCを被せます。被せるときも熱湯でPVCを柔らかくしないと入りませんが、そのままジャブ漬けしてしまうと外皮内部にお湯が入ってしまいます。そうならないよう、熱湯につける際は注意を払う必要があります。
お湯で外皮を柔らかくしつつ、まずは骨格のつま先側を出来るだけ外皮の先の方まで押し込みます。コツとしては、つま先側から徐々に入れていく感じでしょうか(長い靴下をはくときのイメージ)。かかとの方から押し込むだけではなかなか入っていきません。
また、かかとはかなりはまりにくいですが、お湯で温めて力技で押し込みます。Fig.4赤丸部分の外皮が骨格に挟まってしまい、そのせいで入らないということがありましたので、そうなったら細い針金などで挟まってしまったPVCを引き出しておきましょう。
きっちりかかとまで収まったら終わりです。ふぅ。
あ、あと、変な力の入れ方をして関節部分を破損させないようご注意を……例によって例のごとく、全て自己責任でお願いします。
0 件のコメント:
コメントを投稿