2014年10月23日木曜日

今日は何の日化学の日

皆さん、今日10月23日は何の日かご存知でしょうか。そう、化学の日ですね!

うん、まぁ100人に訊いたら95人くらいはご存じないでしょうね、一部で勝手にそう言ってるだけですし、ましてや祝日でも何でもありませんし。

挙句、私も知ったのはつい最近……今日の昼前くらいで、日本化学会からメールが届いて初めて知りました(しかもそのメールは、化学の日を告知するためだけの内容。化学会、力入れてるなぁ)。


が、一応私も化学の輩、化学のより一層の興隆を祈念し、適当に何か書きます。今回は、そういうお話ですが決してためになることはありません。




そもそもなんで10月23日が化学の日なのか、というと、日本化学会HPでも説明されていますが、アボガドロ数である6.02x10^23にちなんでのことらしいです。ふぅん。6月2日じゃダメなんですかね(まぁ、6.02は丸めた数字なので抵抗あるのかもしれませんが)。いっそ祝日にしてしまえば、旗日不毛の月である6月の救世主になれるのに。


それはさておき、化学といえばノーベル化学賞、今年は超高解像の顕微鏡に関する研究ということで外国人の方が授賞されましたね。日本人が授賞した物理学賞と比べてこの扱いの小さいこと小さいこと。

自国から受賞者が出た方を大きく扱うのは当然ですが、それにしたって他の賞にももっとスポットを当ててほしいものです。欲を言うなら、日本人受賞者の有無にかかわらず、毎回コンスタントに一定の規模で取り上げてほしいものです。ノーベル賞を受賞される成果というのは各界においてのマイルストーンなのですから、ニュースバリューとしては劣るかもしれませんが、技術立国を標榜するなら、そして後進を育成する気があるなら「誰が」受賞したかではなくて「何が(どういう成果が)」受賞したかに重きを置いて頂かないと困ると思うのです。



ところで、ノーベル賞の話になったところで、物理と化学の関係について、少し紹介したいともいます。

そもそも物理と化学の境界というのは曖昧で、化学の一分野には「物理化学」という専門分野がありますし、物理学にも「化学物理学」という専門があり、相互にオーバーラップしている部分というのが少なくないんですね。かつてはラザフォードという物理学者がノーベル化学賞を受賞したことがあるくらいですし、それくらい近い学問なのです。今回のGaN薄膜に関してもそうで、材料開発というのは物理と化学双方からのアプローチによって日々研究がすすめられている分野です。


が、残念なことに、化学が如何に日常に貢献しているのか、高校教育で履修しているにもかかわらず広く認知されていないんですよねぇ。
物理は「物理=知的で格好いい」みたいに認識されているのに、「化学=白衣のキモオタ」の構図が出来上がってしまっている気がするのは、私の思いこみ(被害妄想)でしょうか?


というわけで、世間一般で誤認されがちな化学者像を正し、明るくさわやかな化学者の実態を分かっていただこうと思います。



・マッドな学者はいない(あんまり)
白髪で丸メガネかけてフラスコ持って「ヒッヒッヒ」みたいなヤバげな学者はまずいません。言ってしまえば研究もお金がすべてなので、企業などの雇われ研究員はとにかく成果を上げることに追われています。趣味でマッドな研究なんてやってる時間はありません。それに、無断で会社の備品を使うことも許されません(危険な試薬ならなおさら。重量単位で管理されているので)。
大学の研究員であってもそれは同様です。企業よりは趣味的な研究もできますが、それでは予算が付かないので、結局真っ当な(流行りの)研究も手掛けることになります。そして、いまどき一人だけで全てが完結できる研究なんてそうなくて、他の研究者と協調しながら進めていく仕事がほとんどです。なので、人間的にやばい人は実力があっても淘汰されていく傾向にあります。まぁ、少額予算をやりくりして細々と微生物のように暮らしてる人もいますけど……。
それでもマッドな学者ごっこがしたければ、私費をなげうって自宅でやるしかありません。が、それだってたやすくはありません。実験廃液を流し台に捨てることはできませんから、専門業者に依頼することになります。もちろん有料です。実験ゴミも同様です。忘れがちですが排気だってそうです。有害物質を含んだ空気を垂れ流したらどうなることか。そして何より、実験機材は一台ン千万円オーバーはザラ、年間メンテナンスでン十万円もザラ、維持費でン十万円だってザラ! と、普通の人間だったら機材一個買った時点で破産します。
湯水のごとくお金を使える方でしたらマッドな学者になれるかもしれませんが、多分そういう方は社会的地位もお持ちでしょうから、やっぱり無理ですね。



・爆発はしない(あんまり)
フラスコ内の液体を混ぜてドカーン、で、アフロになる、なんてまず起こりません。爆発する試薬の組み合わせは存在しますが、今のご時世、どこもそういう事故には神経質になっており、厳しい指導・管理がなされています。混合して爆発するような実験はしません(させません)し、するなら専用の防爆設備を使います。そして万一事故が起きたらアフロでは済みません。くっそ面倒くさい危機管理なんとか委員会みたいな会議が連日催され、記者会見、状況確認と防止案の策定、そして新聞沙汰へ……。



・白衣は着ない(あんまり)
フィクションに突っ込み入れるのも無粋なのですが、そこから独り歩きしたイメージのせいで誤認されるのも嫌なので言わせていただきます。
ドラマやなにやらで見るたびにうんざりするのですが、白衣を着て校内を闊歩する学生、あんなんいませんからね。そもそも何で白衣を着るのか考えてみてください。あれは試薬で服が汚染されるのを防ぐために着ているもので、別に格好いいから着ているわけじゃないんですよ(ドラマだと明らかに格好いいから着てるんですけど)。ですので、白衣を着たまま室外に出るなんて言語道断なわけです、試薬で白衣が汚れているかもしれないんですから。せいぜい、許容されてもトイレと実験室の行き来くらいでしょう。
そして何より、白衣自体ほとんど着ません。化学系の学生・研究者でも着るのは大抵作業着です。作業内容にもよりますが、ひらひらしていてうっとうしいんですよね白衣って。特に私の専門は解析で、実験装置の調整やPC上での数値解析がメインだったこともあり、白衣を着る機会は皆無でした。知り合いに無機化学が専門の人がいますが、それもやっぱり作業着。有機化学が専門という人は流石に着る機会もあるらしいですが、やっぱり作業着がメインとのことで、少なくとも私の知り合いで白衣を積極的に愛用している人にはあったことがありません。
自分の大学だけの風習かとも思ったのですが、他大学の人に訊いても似たり寄ったりなので、全国的にそうなのだと思います。
もちろん、白衣を着るのが悪いというつもりは無いんですけどね。ただ、どう考えても必要ないのに白衣は着ませんよ。過去、某科学推理物のドラマで、白衣を着た学生が屋外で大型装置組み立ててるのを見たときには閉口しました。そこは作業着だろ……常夏のビーチで礼服着て日光浴するくらい意味不明だよ……。



・人嫌いは少ない(……多分)
誰とも会話せずに一人でむっつり自分のやりたいことに没頭している研究大好き人間、人間嫌いで話しかけても返事すらしない……というのはあんまりいません。研究大好きな人はいますし内向的な人も一定数いますが、話しかければちゃんとレスポンスは返ってきます。というか、返ってきすぎて困るくらい返ってきます。
要は、猫好きの人が自分のペットを自慢したくて仕方ないのと同様に、研究好きの人もやっぱり自分の研究成果を誰かに聞いてほしくて仕方ないんです。が、その一方で研究者というのは内向的でシャイな性格の方が多いので、どうしても人間嫌いに見えてしまう……んだと思います。
ですので、理系研究職の人(あるいは学生)に会ったら、どんな研究をしているのか、将来その技術は我々の生活をどう豊かにしてくれるのか、如何にも興味ありそうな振りして聞いてみてください(間違っても「何の役に立つの?」とは聞かないでください。ニュアンスは同じでも、繊細な研究者たちは『何の役に立つの?=こんなもん役に立たないだろ(笑)』と拡大解釈し、勝手に心に深い傷を負います)。




とまぁ、こんな感じでしょうか。

要は、話の通じないくらい頭のおかしい人は基本的にはいないし、実験はちゃんと安全が保障された管理下でやってますよ、そしておとめチックなくらいに繊細な性格なんですよ。だから化学者だからって奇人扱いしないでね、ということです。

かといって、化学者が少女マンガの主人公バリにさわやかかというと……決してそんなことないんですけどね。



え? 私が嚆矢となってさわやかな化学者を目指せばいいって? ははっ、無理!

0 件のコメント:

コメントを投稿